2024年3月30日(土)
ナビゲーター:岩本彬(Pasticceria Bar Pinocchio)
Barのおはなし② seconda misura
〜お客様の数だけあるカッフェの味〜
マッシモのバールでのある日…
オーナーバリスタのマッシモや先輩バリスタのジョヴァンニからバリスタの所作を習い、今日も今日とて穏やかな時間帯に常連様やスタッフ相手にカッフェを淹れるピノッキオ。
『Ciao ピノッキオ。カッフェをひとつ』とフランコさん。
『ピノッキオ、俺には”いつものカッフェ”』と続いてダヴィデさん。
『私は”いつものカッフェマッキアート”』とフランコの奥さんのシルヴィアさん。
『わたしも”いつものカッフェマッキアート”』と近所のパスティッチェリアで働くピノッキオのお菓子の師匠でもあるノンナ•フランチェスカ。
みんなこのバールの常連様だ。
グラインダーで豆を挽き、2杯抽出用のダブルホルダーに粉を詰め、マシンにセットしてレバーを下ろして10秒程の間に、もう2杯分のカッフェを同じ手順で準備しながらピノッキオは頭の中で注文を復唱する…
フランコさんのカッフェは予めスプーン山盛り二杯の砂糖を入れて…
ダヴィデさんの”いつものカッフェ”は抽出を少し早めに止め、よりカッフェの香りと味わいを深いものにした”ristretto”(リストレット)…
シルヴィアさんの”いつものカッフェマッキアート”のフォームミルクの量をカップの縁の8分目…
フランチェスカの”いつものカッフェマッキアート”はフォームミルクをほんのちょっと垂らすだけ…
ピノッキオは出来上がったカッフェを次々と提供し、それをくいっと飲み干し談笑をする常連様の面々。
『ピノッキオ、やっと俺の(私の)味のカッフェを(注文を)覚えたな!』と、みな満面の笑みで”Ciao.Grazie”の言葉と共に去ってゆく…
『お客様の数だけカッフェの味(注文)があるんだよ。基本の作り方以外に、砂糖を予め入れて抽出するのも、カッフェの抽出量がほんの少し違うのも、マッキアートのミルクの量やフォールミルクの質感が違うのも…常連様の”いつものやつ”を覚え、スマートに提供する。そしてそれぞれの好きな話題の会話に相槌を打つ。それが俺たちバリスタってもんだ。まぁその日の気分で違うものを注文するやつもいるんだがな』と豪快に笑うマッシモ。
常連様の数だけその人の飲み方が、好きな味がある…
顔と名前と”いつものやつ”を覚えるのに大忙しのピノッキオ。
そんなバールでのひととき…