2024年4月21日（日）
ナビゲーター：岩本彬（Pasticceria Bar Pinocchio）

Barのおはなし④ quarto misura

〜真逆な兄弟とリストレットとルンゴ〜

今日もマッシモのバールでお手伝いをしているピノッキオ。

『Ciao マッシモ、ピノッキオ、”いつもの”カッフェをくれるかい？』と、忙しい時間が過ぎ、落ち着きを取り戻した昼下がりにやって来たのは、近くで商店を営む常連のダヴィデさん。

ダヴィデさんの”いつもの”カッフェは”ristoretto”(リストレット)。 エスプレッソの基準となる量の2/3のところで抽出を止める、余分な雑味のないより濃厚で力強い香りが楽しめる飲み方だ。

マッシモから出されたカッフェをくいっと飲み干し、昨晩行われたカルチョの結果を意気揚々とピノッキオに話すダヴィデさん。

マッシモからバールに立つ時に習った心得の一つ”カルチョの話題についていけるよう試合結果、監督、選手と色々知っておくこと”のおかげで、ピノッキオは今やカルチョ談義に花を咲かせるほどに。

『昨夜はミラノダービーでしたね。ダヴィデさんの応援するACミランの逆転勝利で…』と、ピノッキオは満面の笑みを浮かべるダヴィデさんと話しているところに…

『ピノッキオ、俺の”いつもの”カッフェをくれるかい？何だお前も来てたのか…』とバツの悪そうなのは常連のマッテオさん。

マッテオさんはダヴィデさんのお兄さんで二人で商店を切り盛りしている、このバールの大常連だ。

『はいよ、マッテオ。そんなカリカリしなさんな』と手際よく、マッテオさんに”いつもの”カッフェを差し出すマッシモ。

マッテオさんの”いつもの”カッフェは”lungo”(ルンゴ)。
通常のエスプレッソの量で抽出を止めずに、そのまま抽出を続けた飲み方。
アメリカーノのようにエスプレッソをお湯で割るのではなく、エスプレッソを抽出したまま湯量を多くするので、味は薄まり、いつもと違った味わい、風味となる。
力強いカッフェを飲み過ぎたから少し穏やかなものを…少し時間があるから多めに飲みたい…と様々な理由でルンゴを頼むお客様も多い。

『昨日の負けは昨日の負け。次はこっちが勝つからな』とマッテオさんの応援するチームは何とインテルミラノ。

『さて、店をまた開けるか。そろそろいくぞ』そう言って颯爽と店を出ていく二人。

兄弟揃ってエスプレッソの飲み方も、応援するチームも正反対の二人。

試合結果やカッフェの飲み方で何やかんや言い争ってはいるけれど、仲の良い二人。

そんなバールのひととき…