いつもと違うカッフェの味

2024年3月29日(金)
ナビゲーター:岩本彬(Pasticceria Bar Pinocchio)


Barのおはなし① prima misura

~いつもと違うカッフェの味~

今日はマッシモのバールにお手伝いに来ているピノッキオ。

4階建のアパートの1階にあるこのお店は、住人には欠かせない憩いの場であり、交流の場でもある。

カッフェ(エスプレッソ)をクイっと飲み干し、『Ciao』の一言で颯爽と立ち去る者、 バスや電車の時間までカップッチーノを飲みながらバリスタや隣人と井戸端会議をする者、待ち合わせ場所にもなったりとバールは様々な人間模様が描かれる舞台でもある。

朝からひっきりなしに人の出入りがあり、気付けばお昼前に。

『Ciaoピノッキオ。カッフェをくれるかい?』
そう言ったのは、このお店の常連のフランコさん。
フランコさんのカッフェはスプーン山盛り2杯の砂糖を予めカップに入れて淹れるんだっけ…

心なしか朝よりも元気がないように見えるけれど…

『いつもより強めの味で出してみな』
ピノッキオにしか聞こえない小声でマッシモは呟いた。

ピノッキオは言われるがまま強めの味で淹れたカッフェをフランコさんに差し出した。

クイっと飲み干し、カップの底に溜まった砂糖をスプーンですくう。

ニヤリと笑みが溢れるフランコさん。

お店に来てから、出るまで僅か数分。

『Ciao Grazie』

そう言ってまた外へと繰り出していく。

『見るからに元気がない時、天気が悪くてジメジメしている時、俺は自分にも相手にも喝を入れる為に、こうやってわざと強めの味で出すんだ。背中を押されたような、そんな気分になるだろ?』
マッシモは大きな笑みを浮かべ、強めのカッフェの味見をしていたピノッキオの背中を叩くのでした。

少しでも元気になってくれたなら嬉しいな。
そう思うピノッキオ。

そんなバールでのひととき…